茫漠とした白い空間の中に遥か遠くまで黒く深い溝が水平線のように横たわっている。
黒い線の上が現実=意識、下が夢=無意識だということは分かっている。生暖かい液体の中にプカプカト浮かぶ僕はその丁度真ん中を漂っているので、どちらにでも自由に行くことができる。
ここに留まるのは気持ちいいけど、明日は仕事だし下に潜って休まないと疲れが溜まってしまうなーなどと思っていると、5本の指がそれぞれ小さな羽根になっている猿と羊の中間のような動物がやってきた。とても人懐っこそうな目をした彼(?)は僕に「君の願いを一つだけ叶えてあげよう」と言ってくれる。
「え、じゃあちょっと待ってください」と慌てて考える。はて、僕は何が一番欲しいんだ? 車はあまり興味ないし、服はサイズが合ったのでないといけないから、こんな人に頼んでしまうとどんなダボダボなものを買ってくるか分かったものではない。チラリと彼を見ると、相変わらず人懐っこい目をしたまま待ってくれている。では他に欲しい物は何があるんだ? いや待てよ、彼は「願いを一つ」と言った。つまりモノじゃなくてもいいんだ。それだったらいくらでもあるじゃないか。スペイン語が話せるようになりたいし、世界一周だってしてみたいし、地中海の暖かい島でゆっくりと・・・「もういいかい?」と彼が聞く。「はい、大丈夫です」と僕が答えると、彼はニコリと笑って立ち去ろうとする。「えっ? えっ?」と僕が慌てると、相変わらず人の良さそうな目をした彼は言う。「もう願いは叶えたよ。少し待ったじゃないか」
丁度その瞬間、ベッドの下でムイムイいってる虫ががいるので驚いてはね起きたら、携帯のアラームだった。

という感じで朝8時起床。パンを買ってくるのを忘れたので、秘蔵しているカッパスープを飲みながらメールチェックし、8時40分に家を出る。天気はイマイチ。いつものようにSt James Parkを横切り、首相官邸を警備する警官達を横目に通り過ぎる。首相官邸があの通りにあるのは知っているが、左手の煉瓦の建物なのか、それとも右手の白い建物なのだろうか。事務所近くのプレタでクロワッサンを買い、9時半事務所着。
先週で一通りプランは上げたので、今日から立断面を詰めていく。プレゼンではキレーに仕上げた立面を1/200でみせようぜ、なんてこないだのミーティングで決めたのはいいけど、実際に作ってみると2mを超える大きさになる。これくらの規模になると建築的スケール感の把握は不可能になってしまう。お昼は近所のNara。チャペルのスケッチもしないといけないので、昼食をとりながらアイデアを話し合い、スケッチしあう。何個か面白そうなのが出た。昼から基本の図面をPDFにし、イラレで窓や影など簡単にテクスチャをつけ、A1を3枚つなぎ合わせて実際の大きさを作ってみたところで19時過ぎ終了。

今は履物がドイツで買ったVansの靴が一足しかなく、これが冬用のやつで暑苦しいので、Oxford streetのRiver islandに寄って新しい靴を購入。35ポンドほどで、灰色で可愛い。テスコで肉を買い、家にあった野菜を切ってカレーを作る。これで水曜までは乗り切ろう。

食後、大家さんから携帯にテキストがあり、IKEAで机を買ってきたので台所に置いてあるとのこと。普通ロンドンの部屋は家具つきなんだけど、大家さんがこの家を買ったのは実は最近みたいで、今の部屋はホントにベッドしかないから机を買って貰えるようお願いしておいたのだ。喜んで開けてみる。シンプルで小さな机だが、とてもありがたい。しかしドライバーがないので組み立ては明日。
しかし椅子と棚は自分で買わざるを得ないっぽい。ちょいとケチだが、まあ安い家なので仕方なかろう。