チューリッヒ周辺紀行1

4日(金)
18時半に仕事をあがり、帰宅してから僕の後にフラットに入る方と大家さんを会わせる。19時に再び家を出てサウスケンジントンへ。マツオさんからお誘いをうけてカレーの会。食後、某博物館の隣というとんでもない立地にあるマツオさんの自宅でお茶。23時過ぎ解散。

5日(土)
帰宅後、旅行準備を済まし2時間ほど仮眠。午前3時起床し、歩いてVictoria Coach Stationへ。バスに乗って朝5時半Gatwick空港着。7時過ぎのフライトでチューリッヒへ。ほぼ徹夜なのでぐっすり眠り、着陸の衝撃で目覚める。12時前に中央駅にて、3ヶ月ほど前にETHのマスターを修了されたばかりのタケナガ先輩と合流。寮にお邪魔し、荷物を置かせて貰ってから外出。まず案内されたのはチューリッヒ大学法学部の図書館(サンティアゴ・カラトラバ設計)。

既存の書庫の中庭に円形の積層閲覧空間を挿入し、中央の吹き抜けと既存建築との間に出来るギャップを光庭としている。木のルーバーが張られているが、これが光を柔らかく砕くと同時に消音の役割も果たしているので、大空間なのだが音が響かず、とても静かな読書空間になっている。天井にある背骨のようなものはブラインドで、夏場に日差しが強くなると傘のように開いて影を作るとのこと。下から見上げると人は見えないので抽象的なギャラリーのようであり、上から見下ろすと光の中で多くの人が思い思いに本を読む、北欧のような温かみのある図書館。


しょっぱなから凄い建築を見せられ興奮。カラトラバの作品をみたのは初めてだが、改修でもこんな高いクオリティを出す人だとは。

それから近くにあるGigon&Guyer設計の大学施設を外から見学。赤の着色料を混ぜたコンクリートは写真で見るとチープな感じなのだが、近くで見ると深みがあり、いい感じのテクスチャーになっている。雨が降ったので濡れている部分は深い赤、乾いたところは白っぽいグラデーションになっていた。コンクリートの赤、植栽の緑、宙に浮かぶガラスの青という対比が美しい。

天窓用のガラスはあえて10cm程浮かべてフレームを組んであり、建物のプロポーションを引き締めている。

ガラスのフレームに関連して、先輩とスイス建築の「見せるデザイン」について少し話す。現代建築というのは基本的に物質性を排除し、抽象度を高めることで成立している。ミニマルなデザインはライトフィッティングや窓枠などの要素を極力隠すことで抽象性を獲得しようとするものだ。しかしスイスの建築家はそういう方向ではなく、むしろ要素をざっくり見せることで異なる次元での抽象性を獲得しようとしているように思える。

商店街を案内して貰い、遅めの昼食を食べた後、チューリッヒで最も高い建築PRIME TOWERへ。これもGigon&Guyer設計だが、正直なところ、これはちょっと僕には理解しかねる。あれだけ造形力のある人たちが、何故こんな変なプロポーションを故意に選んだのか。僕の美的センスが遅れているだけなのか。近くのFreitagのコンテナと対比させてみる。

それから電車に乗って隣町へ出かけ、ケレツ設計の小学校へ。果たしてこれが小学校に相応しい建築かどうかは疑問だが、とにかくガラスがべらぼうに美しい。宝石のように光っている。

近くにあるメルクリの小学校も見てみる。とても素朴で、佇み方が綺麗な建築。しかし内部をよく見たら施工がものすごく荒くて驚く。メルクリは綺麗な建築を作る人だと思っていたのだが、スイスの人たちからすると彼はかなり荒削りの建築を作る印象らしい。

チューリッヒ市内に戻り、カラトラバ設計の駅舎を覗く。

そこから船に乗って湖をクルージングし、コルビュジェセンターを外から眺める。

雨が降り出したので濡れそぼって退却。寮で先輩お手製のチーズフォンデュを頂いてから就寝。