不満足の中に

週前半の仕事はバターシーのプロジェクト。水曜にクライアントとミーティングがあり、既存建物を残して増築する案2つ、一部を取り壊して増築する案1つ、完全に新しくする案2つの5つのオプションを披露。普通に既存建築の上に一階分増築するだけのつもりだったクライアントは大変驚いていたようだが、とても面白がって貰えた上、経済的にもそのほうがメリットが大きいことを分かって貰えた様子。「中古車を買いに車屋に相談しに来たら、新車のシートの新しい皮の匂いを嗅いでしまったようだ」と笑っていたが、なかなか良い例えだ。

水曜からはベネチアの仕事に戻る。毎週のように違う仕事をやっているので、一体何個の仕事に関わっているのか自分でもよく分からない。重宝されている気がする一方、何でも一人でやってしまう便利屋のように扱われている気もするが、まあポジティブに捉えてやっていくしかないだろう。

自分が作った案をベースにテンダーの図面が描かれているが、デザインがまだ突き抜けたものになっていないので、それぞれの要素を格好良いエレメントにしていくスタディ。無駄を省きつつプロポーションを整え、異なる素材のコンポジションを強調することでキッチンはなかなか格好良いものになったが、他の部分がイマイチ難航。かっちょいいキッチンができた瞬間は「俺って天才かも」と一瞬だけ思ったのだが、他の部分をいくらやってもうまくいかないので、最近は「俺って生きている意味あるのかな」と思っている。ぶはー。

ここ最近、インターンの問い合わせが多くて不思議な感じ。2006年に渡英してから9年になるが、現首相の国際感覚に欠けた発言によって引き起こされた悲劇や、日中韓の不毛な諍いを聞くたびに、日本社会が閉塞的になってしまっている気がしている。海外に行く日本人留学生も随分少なくなっているという話も聞くが、日本が貧しい国になりつつあるという経済的な側面はあるものの、それ以上にこの鎖国的、閉鎖的なメンタリティが作用している気がして個人的にはちょっと心配している。

そんな中で、若い学生が海外で学ぼうという意思を持っているということを聞くと嬉しいし、僕にできるだけのお手伝いはしたいと思う。別に海外に出ることが偉いとは全く思わないが、少なくとも新しいことを学ぼうという姿勢は大事だろう。

満足は不満足の中に求むべし、休息は進歩の中に求むべし、安心は力行の中に求むべし。