今週も人と会う

6月7日(金)
前日の実測をもとに図面を起こそうとするが、調査の際に非常にモノが多くきちんと測れなかったので全然あわない。しかしロンドンの古い建物はレンガでできているので、写真をもとにレンガの数を数えればだいたいの大きさが分かる。煉瓦のサイズは国によってちがうようだが、UKの普通の煉瓦は215 × 102.5 × 65 mmで、これに目地のモルタルの厚み(約1cm)を足したものがワンユニット。これのお陰で何とかそれらしい図面が引けた。

18時半にあがりグリニッジへ。Takさんの先輩で建築家の光嶋さんとグリニッジ大学に在学している二本柳さんにお会いし、一緒にグリニッジ大建築学部のSummer Showオープニングへ。数年前にUCLでは政治闘争があったようで、バートレットの建築の先生が大挙してグリニッジ大学に移籍し、ここを拠点に新しい教育をはじめたばかり。やはりバートレット色の強い作品が多いものの少し雰囲気の違うものもあり、展示として結構楽しめた。まだ世界的には知られていないが、これから5年10年経ったらまたバートレットとは違う色が出てきて面白い学校になるのではないだろうか。

4人でカティサーク駅前のイタリアンで夕食。光嶋さんはドイツでの武者修行を終えて2008年に帰国、早速設計した処女作で建築家の登竜門とされるSD Reviewに入選、現在は3つの設計プロジェクトをすすめつつ本を2冊出版し、大学の助教に就任、さらにはNHKの番組でMCもやっているというまさに八面六臂の活躍で、今回もTV番組の取材で来英されたそうだ。スケッチブックもみせて頂いたが、既にスケッチだけを集めた本を出版し、井上雄彦さんと対談したりしてる方なので当然ムチャうまい。ますます自分の絵に対する自信を喪失するが、まあでも比べても仕方ない。与えられたものでやっていくしかないのだ。設計に対するスタンスなど色々刺激になるお話しをして頂いた。終電間際に帰宅。

6月8日(土)
昼前に事務所へ着き、14時から事務所のミーティングルームでShari。ここ2週間はコミ社長が不在なので、先週はTakさん、今週は僕がホスト役を務める。NZプロジェクトはなんとか飛躍のある提案をできないかと考えているのだが、どうもパリッとしたものにならない。もともと僕は建築よりも建物の設計が得意なタイプなので、「ぶっ飛んだ案をつくる」ってのは自分の苦手とするタスクなのだが、なんとかうまくできないものだろうか。19時ごろ終了し、Barでワインを一杯飲んでから激辛の四川料理Bar Shuへ。これはもう食事というよりは戦いだ。しかし癖になる辛さ。

6月9日(日)
昼過ぎにSohoのYumchaaにてバートレットに在学中のRisaさんとお会いする。就職やVisaに関して相談をうけたのだ。UKBAのシステムや自分のVisa取得までの七転八倒などをお話しし、事務所の仕事をお見せする。職場を案内してから外を歩いていたら、たまたま3年前にウチの事務所で働いていたShogoと彼女さんとばったり会う。そして実はShogoとRisaさんはバートレットで同じUnitに所属しているそうで、お互いビックリ。折角なのでPubで一杯飲んで、昔話などしてから解散。


6月10日(月)
なんだか朝から眠い。一応仕事はするも、19時にはヘロヘロになって帰宅。早めに寝る。

6月11日(火)
昨夜ゆっくりしたからか、朝からわりと調子が良い。19時に終了。なんとなく古本屋に寄って岩波文庫の『歎異抄(たんにしょう)』があるのを見つけて購入。記憶が曖昧だが(たしか司馬遼太郎が書いてた)、戦争末期に絶望的な戦況の中で前線に赴く若き士官の多くが、心の慰めに読んでいたという話を知ってから興味を持っていた。親鸞の教えの本質と異なる教義を説くものが後を絶たないことを憂慮し(異を歎き)、弟子の一人唯円が書いたといわれる書だが、仏教についての本のなかではかなり異端に入るようだ。まだ全部を読んでいないので半端なことを書くべきではないのだろうが、なにせ伝説的な聖人がひどく正直なことを言っている。「浄土往来のために念仏を唱えていますが、歓喜の情はうとく、これでは浄土にいける気がしません」と相談する唯円に、親鸞は「実は俺もそうなんだよ」と言ってしまう。しかし、だからこそ念仏は価値があるのだという。念仏は唱えるものを恍惚の境に導くものではく、現実の自身を自覚させるものなのだと。

古本屋の近くのKirazuに寄って晩御飯。豆腐サラダと醤油ラーメン、日本酒。うまし。ご主人はわざわざ僕のブログを読んでくれたらしい。ありがとうございます。でも明日の仕込みの相談なんかされても僕は分かりません(笑)