建築の皮膚

他の仕事に追われていて住宅の仕事はスローダウンしてしまった。現場から図面はまだかとの催促を受けるも、クライアントに仕上げの最終確認をしないといけないし、そもそもあんた達が先日約束した暖房器具の詳細を詰めてくれないから椅子の詳細が決まらんのじゃーなどと言い訳をしてごまかす。いや事実なのだが。

今週の土曜はこみ社長曰く「Shariの大プレゼン大会」。僕も久々の参加だったが、すごい人数だった。各自のプロジェクトや最近興味をそそられた事象などについて諸々アップデート。それぞればらばらに発表したのだが、不思議と共通するテーマのものがいくつかあり面白かった。

(c) Y. Komiyama

微気候の調整装置としての建築皮膜というのは多くのヒトが興味を持っているテーマだと思う。コミさんのドイツ時代のプロジェクトでは、開閉装置やブラインドなど様々な可動機構を屋根に付随させることで、呼吸する皮膚のように内部環境(微気候)を最適化できる建築を提案していた。

同じようなコンセプトを実際に建築として実践するとどうなるのかという例の一つとして、うちの事務所の最初の住宅について僕も簡単にお話しする。15年以上前にデザインを始めたボスのデビュー作で、4方全てを近隣住宅に囲まれた敷地の中で、唯一自然に面する屋根を微気候の調整装置としてデザインしている。天窓には温度センサーがついており、室内が暑くなると自動で換気する(ロンドンは夏でも比較的涼しいので住宅には普通エアコンは無く、窓を開けて風を通せば十分な冷房効果がある)し、雨が降るとレインセンサーが感知して自動で閉まるようになっていた。のだが、実際にはセンサーは数年で故障し、予定していたほどうまく機能しなかったとのこと。

故障は電気を使うハイテック建築の根本的な問題で、機構を増やすほど制御可能なファクター(気温、湿度、光など)は増えるが、複雑にすればするほど問題が起こりやすくなり、更に問題が起こった場合にどこが変なのか分かりにくくなる。つまり極力単純なシステムで、できるだけ多くの要素を変動させれるのが理想なわけだ。

僕は参加していないが、先日Shariはユニバーサルホームのデザインコンペで入選し、今日はその発表もあった。ここではベニヤを使った呼吸する皮膜を提案している。ベニヤに切り込みを入れることで、温度と湿度の変動により切り込まれた部分のベニヤは膨張あるいは収縮し、開口部の大きさが変形する。開口部の大きさが変わることにより、光の入り方、風の流れ方などが変化し、内部の環境が自動的に最適化されるというコンセプト。正倉院宝物殿の木材を利用した湿度調整システムみたいなものだ(実際にはその機能はなかったらしいが)。素材そのものの伸縮・膨張という習性を利用しているわけだがら、これは故障の仕様が無い。もちろん実際に実用化することを考えると、耐久性など色々な問題がすぐに思い浮かぶが、方向性としてはとても示唆に富んでいると思う。

賑やかなプレゼンは14時から18時半まで続いて終了。食事はBusaba Thai。食後に近くのCafeでお茶し、東京でコンペの授賞式に参加してからロンドンに帰ってきたポンデさんを迎える。テーブル2つに分かれて座っていたが、下衆ヤバ男ばかりの僕のテーブルでは某氏の自己愛撫手法について爆笑に次ぐ爆笑だった。あー笑った