建築はそこにある

今週からベネチアの仕事に戻っているが、相変わらずうまく行かない。昼前にボスと相談し、抜本的なアプローチ変更を決定した。徹底的にローキーな戦術でいってみることに。

今年に入って以降、建築家の作家性というのはどこにあるのだろうかと自分達に問いかけている気がする。躯体がいじれれば空間の定義(空間同士の繋がり方、回遊性)を変えれるのでそれが一番建築的なアプローチだが、ベネチアの、それも大運河に面しているこの物件では壁の位置や開口部を変えることができない=空間体験を大きく変えることはできない。基本技が封じられたので、作家性を保つ為に家具をデザインしようと悪戦苦闘してみたが、まあそう簡単にいくものではない、というか、世界的な彫刻家にアマチュアが中途半端なオブジェを見せているのだから、そう簡単に気に入って貰えるわけもない。

結局、「デザインしない」というやり方でスタディをはじめた。少なくとも800年前から存在しているというこの建築を綺麗に魅せることだけをテーマにし、最低限必要な現代的な設備を目立たないように装備させる。あとの余計な要素は徹底的に排除し、かつて貴族が使っていた空間を贅沢に味わえるようにする。

方向といしては恐らく正しい、というかそれは前から分かっていたのだけど、このアプローチは作家性を放棄してしまうということではないのかと思っていたのでやらなかったのだ。果たしてこれで作品性が保てるか、建築になるのか、かなり危ない橋を渡ることになる気がするが、しかし今まで全くやったことのないアプローチができるので嬉しい。不安と期待が半々だ。

ミーティングの最後、建築になるかなー?と心配する僕にボスはこう言った。
「Architecture is already there(建築はもうそこにあるじゃないか)」


ところで最近センターにどんどんラーメン屋ができているが、中でもジャパセンの運営している博多ラーメン昇竜の店舗の増殖が著しい。こないだライスワインショップ前にできたと思ったら、今日の昼にアラヤさんとの昼食に行く為に通ったカーナビーストリートで新店舗が出来ているのを発見した。昇竜のデザインは山大の先輩のナリさんがやっているらしいので宣伝しておこう。新店舗ではラーメン半額で売っていますので、ロンドンの方は是非。