ベルギー旅行最終日 ドタバタの北フランス

朝10時頃起床。大家さんと挨拶してから11時過ぎに家を出る。15分程度で駅に到着するも問題が発生。レンタカーのオフィスが閉まっているのだ。ヨーロッパでは大都市以外のレンタカーオフィスは日曜に閉まってしまうのは知っているのだが、張り紙が英語ではないのでどこに駐車すれば良いのか分からない。携帯から電話しようとしたが何故か僕の携帯は海外通話が出来ない(後に判明したが、僕の契約では国際電話はデポジットを先に払っておかないとかけれないシステムらしい)。

仕方ないのでそのあたりに駐車し、駅の売店でカードを購入してオフィスに電話するも、自動音声でウェブサイトのアドレスとアクシデントの時の番号だけ教えられる。その番号に電話すると、そこは事故担当の部署なのでどうしたらいいのか分からないとの回答。もう一つのオフィスに電話したが閉まっており同じ自動音声が流れる。イライラしながらもう一回事故担当の番号にかけると、日曜でも開いている首都ブリュッセルオフィスにかけてくれとの返答。そこに電話してようやく親切な担当の男性と話せて、どこでも良いのでオフィス近くの駐車場に停めてから鍵をオフィスのポストに入れるよう言われる。ようやく車を返却できたが、ガソリン入れたりしてたら予定外に時間がかかってしまい13時過ぎになってしまう。

ほっとしてLilleまでの電車のチケットを購入しようとすると、次の問題が発覚。随分遅れてしまい、予定していた直行便を乗り過ごしてしまったので、途中でバスを使ったりする便でいかないといけなくなり、14時に着くはずだったのだが16時になる。そこから今日の目的地Lensまでは一時間なので、17時に到着になってしまう。とはいえ仕方ないのでその便で行ってみることに。
Lille Flandres駅までは順調に着いたが、駅に荷物を預けようとしたがコインロッカーがない。歩いて5分のところにあるLille Europe駅にはあるとのことなのでそこまで歩くが、預かり所は駅の端にある上に何人か並んでいる。次の電車まで時間がなかったので、失礼だが並んでいた方に事情を話をして先に預けさせていただく。走ってLille Flandres駅まで戻り、ギリギリで列車に乗り込む。席についたとたんに発車。危なかった。

予定通り17時過ぎにLens駅についたが、そこで判明したのが駅からルーブル美術館の新館までは徒歩25分という衝撃の事実。タクシーを考えたが駅前に停まっていなかったので、仕方なく早足で歩く。ランドスケープデザイナーが遊歩道を整備しており、花に包まれた綺麗な道が続いていたが、エンジョイすることもできず急ぐ。しかしようやく到着したのは17時半。レセプションの方に「残念だけど、18時閉館なのでもう展示室のチケットは売っていないのよ」と言われる。3人とも絶望的な顔をしていたのか、気を使ったレセプションのお姉さんが「地下のクロークルームだったら見れるわよ」と言うのでトボトボと地下へ。クロークルームの反対側は全面ガラスで、地下に設置されている美術品の修復室が見学できるようになっていた。まあ仕方ない、外から眺めようやとお互いを励ましながら階段を上ってロビーに出るとさっきのお姉さんが立っており、「余ってたチケットがあったわ」とミエミエの嘘をつきながらチケットを3枚無料で渡される。ちょっと泣きそうなくらい嬉しかった。お礼を言うと、「少ししか時間ないけど、折角来たんだから見ていかないとダメよ!」と笑って去っていった。ツンデレってこういうこと? そら惚れるわ。

ロビーは全周ガラス張りで視界が周囲に抜ける開放的な空間。対照的に展示空間はいわゆるブラックボックスで開口のない壁に囲まれているが、天井は全てガラス張りでとても明るい。ガラス屋根は水勾配がついているが、結構なスパンなので中央部はかなり高くなっており、外から見たら工場のような屋根が少し見えてしまっていた。何故屋根をすっぽり隠せるくらい外壁を高くしなかったのだろうか。常設展示空間は思ったよりも小さかったが、壁が外装と同じアルミなので展示空間をやわらかく反射しており、感覚的には実際よりもすっと大きいように感じる。

ちなみにここはStudio Adrien Gard〓reによる新しい展示空間のコンセプトでも有名。まずは壁を展示に使っていないこと。普通の美術館だと壁に展示品を並べるのだが、この美術館では壁には展示物をかけず、広い展示空間の中に島のように点々とオブジェが置かれている。もうひとつはカテゴリーではなく時間軸に沿った展示をしていること。普通の美術館ではギリシャ、エジプトといった具合に地域ごとに展示空間を分けるのだが、ここでは全ての地域が一つの空間に集められ、時間によって並べられている。つまり同じ時代に中東で作られたものと欧州でつくられたものを同時に鑑賞できるわけだ。

普通の展示とは全く違う雰囲気を持っており、色々と示唆的な空間で素晴らしいと思った。ただ、実際に見てみたら予想以上に小さな展示空間だったので、これらのコンセプトは最初から提示されたものではなく、限られた展示物をできるだけ贅沢に鑑賞できる工夫として編み出された苦肉の策のようにも感じた。

18時にスタッフにお礼を言いながら外に出て、外周を20分ほど歩く。本当に写真どおりの何ともいえない絶妙な反射のアルミ板で覆われている。空と緑が柔らかく移り込んで綺麗だった。

美術館周囲の庭のデザインを担当したのはMosbachという今を時めくランドスケープアーキテクト。どうも敷地は炭鉱の跡地らしく、それをモチーフにしたランドスケープのデザインがなされていたが、SANAAのプレーンな建物と比べかなり自己主張の強いアクのあるデザインで、僕はあまり好きじゃなかったな。これみよがしのShow offするデザインは嫌いだ。あと何故か屋上に必要ないはずの手すりが付けられている場所があり不思議だった。オープン当初の写真にはないので後から勝手に付けられたのだろうが、こういう配慮のない行為が建築そのものの価値をどれだけ下げるのか、美術館関係者なら分かると思うのだが。。。

何とか内外両方見学できて良かったが、今度は帰りの便があるので再び急ぎ足で駅まで戻る。19時前の列車に飛び乗り、Lilleに20時前着。MROさんはパリに行く電車のチケットを買っていなかったので先にチケットを買いに行き、僕とJunさんで荷物を受け取って戻ってきたが、集合場所にMROさんがいない。2人で交代で探しながらしばらく待つが、僕は20時半のEurostarでイギリスに戻らないといけなかったので、20時10分に先に失礼する。後で分かったけどMROさんはチケットオフィスが行列で並んでいたらしい。最後はバタバタだったけど、最終的には僕はイギリスへ、Junさんはアムステルダムへ、MROさんはパリへたどり着いたようだ。いやーよかった。